平日の夜、友人2人とロイヤルホストに集まる定例会。いつも通りとりとめのないおしゃべりで労働の疲れを癒していたら、ふと昨年みんなで行った三島旅行の話になった。
三島は水がとても綺麗な場所で、友人に運転してもらって川を散策したりうなぎを食べたりととても楽しかったのだが、
「そういえば、車から見かけたあのレストラン…」
と誰かが発した言葉で、3人全員が同じ店を思い出した。
富士山が見える国道沿いに突如現れた、昭和の空気を感じる石造りのレストラン。あまりに印象的で幻なんじゃないかと思ったほど。
そして思い出したが最後、強烈に行きたい気持ちが湧いてきてしまった。
冗談まじりで「明日にでも行きたい!」と言っていたが、ダメ元で各々スケジュールを確認したところ、仕事の予定を調整したら…行けちゃう?!
そうして平日日帰り旅行が急遽決定。大人って案外何でもできちゃうんだなぁとテンションがあがったまま、「じゃあ数時間後に!」と軽い足取りでロイヤルホストを後にした。
翌朝。友人が車で迎えに来てくれて、小雨のなかドライブがスタート。
ちなみに私だけがペーパードライバーなので、運転を引き受けてくれる友人2人には頭が上がらない。いつもありがとうね。
目指すは国道1号線沿いのレストラン「アサカ」。静岡に近づくにつれて空が晴れてきて、レースのような薄い雲から頭をのぞかせる山々がとても綺麗だった。
いよいよアサカが視界に入り、「本当にあった!」と喜ぶ私たち。
ずっしりとした石造りの建物なのに、1階部分が無く大きな1枚ガラスで向こう側まで見通せるため、浮かんでいるように見える。黄色いビニールのトンネルをくぐって階段をあがり、そうっと入店した。
お店のなかも想像通り素敵な装飾で、シンボルのようなライトに壁から床まで同じ柄のカーペット、曲線が美しく手になじむ椅子、清潔なテーブルクロス。
雲がかかっていたので残念ながら富士山は見えなかったけれど、視界が開けていてとても気持ちが良い。まだ夢のようでふわふわした心地だ。
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メニューにはベーシックな洋食がずらり。
あれもこれも美味しそうで散々迷ったあげく、私はメンチカツ、友人2人は白身魚の黄金焼きとしょうが焼きを頼んだ。
メンチカツはげんこつサイズが二つの大ボリューム!お肉がギュギュっと詰まっていて、これはもうハンバーグフライだ。
洋食に添えられた平皿のライスには、いつものお茶碗で食べるのとは全く違う美味しさがある。
お昼時になりお客さんが増えてきたので、次の目的地であるパン屋さん「ブーランジェリーアダチ」へ。
友人はこのために車に冷蔵庫を積んでくる気合いの入りよう。
店内に入った瞬間幸せを感じる小麦の香りに、普段はあまりパンを食べない私もしっかり購入。
撮影前に食べてしまったサンドイッチとクロワッサン、ピスタチオのデニッシュ、そして王冠のような見た目のミルクパン。もっちりしていてミルクの香りがとっても優しかった。
パンって幸せな食べ物だなぁ。
次に目指したのは「柿田川湧水群」。富士山の雪解け水が湧き出る「わき間」や柿田川を眺められる。
空気が綺麗でひんやりとしていて「近所にあったら毎日来ちゃうね」と話しながらお散歩。
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その後は「純喫茶 キネマ座」へ。
平日に突然やって来た私たちに「何友達?」と不思議そうに聞いてくれるマスターとおしゃべりをしながら甘いミルクティーを飲んだ。
店内には映画のパンフレットがたくさんあって図書館のよう。壁にはマスターの「今月の映画採点表」が。ちなみに5月公開の映画では「悪は存在しない」が最高点数らしい。
マスターはお客さんや店員さんとずっと映画の話をしていて、どんな地域にでも文化的に豊かに暮らしている人はたくさんいるんだなぁとなんだか嬉しい気持ちになった。
近くに住んでいなくたって、同じ話題で楽しく盛り上がれるんだ。
日帰りでもこんなに色々なところに行けるんだとほくほくした気持ちで帰路につく。帰りは混むかなと思っていたが、平日なことを忘れていた。
途中で寄った足利SAもガラガラ。静岡おでんの匂いにつられ、ついつい買い食いをした。ちゃんと美味しくておすすめです。
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自宅に帰ってからも翌日になってもなんだかふわふわとした気持ちで、この日帰り旅行の全てが本当の非日常だった。
車内で宇多田ヒカルと椎名林檎を流していたのだが、友人に「これが二時間だけのバカンスじゃん」と言われて膝を打った。
平日のファミレスで突然思いついたエスケープ。
日常からそっと斜めにはみ出してみると、大人になって良かったと思えた。